シンガーソングライターの植村花菜(うえむらかな)さんの曲「トイレの神様」をはじめて聴いた。youtubeのビデオ再生回数からすると相当人気のある曲らしい。これはスピーチでも演説でもないが、音楽つきの物語という感じでアメリカのプロの話し手が使うstorytelling(物語による説得術)とまったく同じといっていい。話術ではないけれどもストーリー・テリングのとてもいいサンプルだと思う。


その内容は彼女の実体験に基づいており、祖母の思い出が物語のテーマとなっている。

おばあちゃんとの関係が良好だった日々。
おばあちゃんとの関係がうまくいかなくなった時期。
おばあちゃんと疎遠だった時期。
おばあちゃんの入院。
おばあちゃんとの再会と別れ。
後悔と感謝

もちろん歌の弾き語りとパブリック・スピーキングには違いもあって、パブリック・スピーキングでは、話し手は聴衆に何かをしてほしいわけだから話にはちゃんと「××をしてほしい」というメッセージがある。たとえば、この曲を前提にして考えれば「ずっと連絡を取っていない家族がいるなら久しぶりに連絡してみよう。手遅れになる前に」とか「感謝したい人がいるなら先延ばしせずに今すぐ伝えよう」などのメッセージが一般的だ。

ただそう言っただけでは人は動かない。北米のプロの話し手たちが何に心を砕き気を使っているか、何をいつも注意しているかを調べてみると、共通している課題は最終的にはただ一点。どうやって人を動かすのか。どうやって話の内容を記憶にとどめてもらい、どうやって実際に行動してもらうのかに尽きる。

・人生は短い

・いずれ別れが訪れる

・感謝を伝えるなら今のうち

・後でもっと優しくしてやればよかったと後悔する

・今やらなければ後で必ず後悔する

・喧嘩別れした親友は今どこに

・家族と仲直りするなら今のうち

・今すぐ電話をメールを

こいう箇条書きを骨子としたメッセージを力強く伝えるだけでは、人は納得し同意はしても実際の行動は起こさない。どんなにいい話であろうが、会場を後にするころには話の内容なんかもうほとんど忘れてしまっているのが普通だ。であるからこそ記憶に残させるために、そこにもう一つ仕掛けが必要で、そのためにプロたちはストーリー・テリングを使うという。

そのストーリー・テリングのテクニックは植村花菜さんの弾き語りと基本的には同じ。臨場感と感情移入。下のビデオを見てもらえばわかるとおり、知らず知らずのうちに孫の立場から曲を聴いているはず。おばあちゃんに感情移入してその立場から曲を聴く人はいないはず。



storytelling(物語による説得術)の効果

以上の観点からこの曲を聴いてもらえば、いい語り部による物語のパワフルな効果を実感してもらえると思う。さらに、記憶に残り忘れにくいとはどういうことなのか実際に確認してもらえると思う。

トイレの神様/植村花菜
http://www.youtube.com/watch?v=Z2VoEN1iooE&playnext_from=TL&videos=xlY16nT3Drc

こういう物語を聞かされて「だから今やらないでどうする」と迫られれば、そのメッセージの持つ影響力は、くどくどした箇条書きのメッセージのそれとは比べ物にならないほど大きくなる。

プロの話し手とは、結局、この曲と同じ効果を「しゃべり」で引き出せる人たちなわけだが、われわれも真似できる点はどんどん真似するほうがいい。



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soudenjapan、45歳、コンサルタント。やっと英語が楽になり20年かかって英語を握ったと感じる。と思ったのもつかの間、そこには広大な未知の領域が残っているようだ。

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